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作業療法
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作業機能と作業機能障害の意味を解説【作業療法士の仕事内容にかかわる問題です】

Makoto KYOUGOKU
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京極真
京極真

本記事では「作業療法士は何が専門なの?」という疑問にお答えします

コアコンセプトの理解はちょー大切

専門職であるならば、自分がクライエントに何ができるのか、あるいは何をしているのかを明確に説明できなければなりません。

例えば、理学療法士であれば、自身が身体機能に精通しており、身体機能障害を改善することができるし、自分はそのために環境調整を行い、客観的な身体像と主観的な身体感のバランスを改善するアプローチを行っている、と明快に理解し、クライエントと共有できる必要があります。

このとき、理学療法士が身体機能と身体機能障害について理解できておらず、自分が目の前にいるクライエントに明確に説明できなかったらどうでしょうか。

きっと、クライエントは理学療法士に対して不信感を覚えるでしょうし、多職種も理学療法士の能力に不満を訴えるでしょうし、理学療法士自身もアイデンティティクライシスを体験するはずです。

作業療法士のコアコンセプト

理学療法士にとってのコアコンセプトのひとつが身体機能と身体機能障害であるのと同様に、作業療法士にとってのそれは作業機能と作業機能障害です。

ひとによっては、作業適応と作業不適応、作業遂行と作業遂行障害、作業遂行機能と作業遂行機能障害、活動・参加と活動制限・参加制約、適応的作業機能と不適応的作業機能などと表現していますが、これらは基本的に同じ事柄を表しています。

では作業機能と作業機能障害とはなにか?

まずは作業機能について

平たく言ってしまえば、作業機能とは作業ができている/作業にかかわれている状態を意味しています。

例えば、何らかの病で身体の痛みに苦しんでいる人が、気分を紛らわすために趣味活動に参加できていれば、作業的に機能していると理解します(よーするに作業機能)。

また、何らかの障害で移動に問題がある人が、電動車椅子の導入などによって環境を調整し、新しい移動の仕方を学び、学校・職場に行けるようになれば、作業的に機能している状態であると理解することになります(よーするに作業機能)。

もちろん、医学的な問題が特にない人(健常者)が、毎日こころ楽しく時間を過ごし、仕事とプライベートを満喫することができていれば、これも作業的に機能していると理解できます(よーするに作業機能)。

単に作業機能といった場合、それは日々の生活行為ができている、あるいは生活行為にかかわれている、という状態を表していると理解するのです。

次に作業機能障害について

では作業機能障害とはなにか?

先ほど書いたように、作業機能とは作業ができている/作業にかかわれている状態を意味しています。

ということは、簡単に言ってしまえば、作業機能障害は作業ができていない/作業にかかわれていない状態を表しています。

例えば、骨折などの何らかの身体機能障害がある人が、痛みや動作などの制約によってセルフケアができなくなっていれば、作業的に機能していない状態であると理解します(よーするに作業機能障害)。

また、抑鬱など何らかの精神機能障害にある人が、恋人や家族とともにお祝いや行事などにこころ楽しく参加できていないのであれば、作業的に機能していない状態であると理解することができます(よーするに作業機能障害)。

もちろん、医学的な問題が特にない人(健常者)が、周囲の反対で進路を諦めざるを得なかったのであれば、作業的に機能していない状態ととらえることになります(よーするに作業機能障害)。

単に作業機能障害といった場合、それは日々の生活行為ができていない、あるいは生活行為にかかわれていない、という状態を表していると理解する必要があります。

作業機能と作業機能障害はわけてとらえない

ひとりの人間の日々の暮らしのなかに、作業機能と作業機能障害が併存しています。

ときどき作業機能と作業機能障害を対概念ととらえて混乱している人がいますけど、それは明らかな誤解です。

例えば、脳血管障害のある人で、セルフケアができているのに、元の仕事に参加できない、というケースがあります。

これはセルフケアは作業的に機能しており、仕事は作業的に機能していない状態です。

また医学的な問題が特にない人(健常者)で、趣味は充実しているけども、学校はサボリ気味である、というケースがあります。

この場合、趣味の活動は作業的に機能しており、学校での勉強などは作業的に機能していない、と理解することになります。

作業機能と作業機能障害は矛盾することなく併存するものであり、それぞれ別の概念であるととらえると混乱のもとです。

ちょっとした危惧

ところで、先日ある集まりにいったときに、作業療法士養成校のなかには作業機能と作業機能障害についてほとんど教えず、たいはんの時間は身体機能と身体機能障害、精神機能と精神機能障害などの教授に費やしていると聞きました。

もちろん、医療保健福祉では多職種の共通のフレームに疾患別プロトコルにしたがったアプローチがあるので、身体機能と身体機能障害、精神機能と精神機能障害などについてしっかり教えるのは当然必要です。

けど、作業療法士養成校で作業機能と作業機能障害についてほぼまったく教えないところがあるというのは、冒頭で示した専門職に期待される役割を満たせないのではないか、とぼくは勝手に危惧しています。

作業療法士養成校では、身体機能障害に関連した作業機能障害、精神機能障害に関連した作業機能障害の教育を充実させてくださいね。

また臨床でも、作業療法士であるならば、コアコンセプトである作業機能と作業機能障害の理解は欠かせないと腹をくくっておきましょう。

まとめ:作業機能と作業機能障害の意味を解説【作業療法士の仕事内容にかかわる問題です】

本記事では「作業療法士は何が専門なの?」という疑問にお答えしました。

参考になれば幸いです。

著者紹介
京極 真
京極 真
Ph.D.、OT
1976年大阪府生まれ。Ph.D、OT。Thriver Project代表。吉備国際大学ならびに同大学大学院・教授(役職:人間科学部長、保健科学研究科長、(通信制)保健科学研究科長、他)。首都大学東京大学院人間健康科学研究科博士後期課程・終了。『医療関係者のための信念対立解明アプローチ』『OCP・OFP・OBPで学ぶ作業療法実践の教科書』『作業で創るエビデンス』など著書・論文多数。
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