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人口減少のメリットとデメリットは視点によって変わる

京極真
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京極真
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本記事では「人口減少は大問題だという人もいれば、たいした問題ではないという人もいます。いったいどっちが本当なんだろうか」という疑問にお答えします

こんな方におすすめ
  • 人口減少でメリット派とデメリット派が生じる理由を知りたい
  • 人口減少の実態をざっくり知りたい

人口減少のメリットとデメリットは視点によって変わる

結論をいえば、人口減少のメリットとデメリットは視点によって変わります。

超単純にいうと、以下のような感じ。

  • 環境との調和→メリット
  • 経済成長重視→デメリット

すべての議論を調べたわけではないので、もちろん例外があると承知しています。

ですが、ここで押さえたいのは、どんな課題も視点によってメリットとデメリットを見いだせるという点です。

特に、人口減少のような社会構造そのものを変えるような課題は、無数のパラメータが関与していますから切り口によって描き方を変えることができます。

その結果、何が起こるかというと、信念対立です。

日本が直面しているタイプの人口減少は、過去になかった新しい事象です。

なので、歴史から精度高めに学べませんので、いろんな視点から「予測」を論じあうというかたちになります。

そのぶん不確かさが増していくので、信念対立が生じやすく、不毛な議論で消耗して、全体でポシャることも起こりかねないです。

これは、ぼくら全員にかかわる課題なので、余計な信念対立を回避しつつ建設的に対策を立てていくには、この点を理解しておく必要があるかと思っています。

人口減少の実態

人口減少のメリットとデメリットを解説する前に、まずは実態把握からしておきましょう。

この辺の資料は国立社会保障・人口問題研究所、総務省、厚生労働省などなどが発表しているので、それを確認したらひとまずOK。

まずは全体の人口推移です。

https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h28/html/nc111110.html

これを見たらわかるように、これから日本は人口減少&高齢化&少子化が同時に進行します。

過去に人類は、この3つが同時に進む課題を体験したことがありません。

だから、これから何が起こるかは、本当のところは誰にもよくわからないのです。

人口減少&高齢化&少子化が同時進行するというのは確定です。

けど、それによってもたらされる未来は、いまわかっているデータに原則を当てはめて、いろいろ予測することはできますけども、過去に類似の事象がないから未知数な部分が多いわけです。

さて、わかりやすくするために、上記の数字から人口減少を要約するとこんな感じです。

  • 2010年から2020年:396万人減
  • 2020年から2030年:748万人減
  • 2030年から2040年:934万人減
  • 2040年から2050年:1020万人減
  • 2050年から2060年:1034万人減

ぼくは教育界にいるので、2010年から2020年の人口減少は相当キツく感じました。

正直なところ、もううんざりです。

ところが、2020年以降は過去10年間よりも急激に人口減少します。

今まででもキツかったのに、これからさらにキツくなるのかと思うと、暗澹たる気持ちになりますね。

さて、上記の表は2060年までの予想ですが、2060年以降は以下のように予想されています。

https://www.soumu.go.jp/main_content/000273900.pdf

基本的には、人口減少が加速していくことがわかるかと思います。

今年生まれた人が80歳になる頃は、中位集計で4,771万人まで減少するという予想です。

出生率減少は予想を超えるペースで進んでいますので、このままいけば低位推計の3,770万人になるのではないか、と個人的には予感を抱いてしまいます。

驚くのは、そこで底打ちしないところです。

さらに減る可能性がある。

ビックリですよね。

まぁ、ぼくはその頃には死んでいるけども。

さて、ざっくり実態を把握したうえで、人口減少のメリットとデメリットが視点によって変わることを確認していきましょう。

人口減少のメリットを見いだす視点

まず、人口減少のメリットは、環境との調和という視点にたつと見いだせます。

例えば、ビュリッツァー賞を受賞した大学者ジャレド・ダイアモンドは、日本にとって人口減少は利点になると主張しています。

日本最大の問題が資源不足で、人口減少すればこの難題を解決できるからです。

確かに、人が減れば必要な資源も減るわけで、資源の乏しい日本にとってはメリットになります。

人口減少、万歳。

同様の議論は以下の書籍でもみることができます。

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また、日本学術会議 人口・食料・エネルギー特別委員会の報告書でも、環境との調和という観点から人口減少のメリットに目を向けるよう誘っています。

一部抜粋すると以下の通り。

人口減少社会には、当然、メリットとデメリットが考えられ、従来のような「成長社会」 を想定すればデメリットばかりが目立つが、環境と資源の両面でこれまでのような成長社 会志向はもはや限界に近づきつつあると思われる。

〜略〜

人口減少のメリットを生かし、持続可能な社会を構築するためには、わが国の国家目標 を経済的成長から文化的成長とも呼べるものに転換していく必要がある。人々が多様で豊 かな環境と文化に囲まれて暮らし、自身もそれらへの貢献を目指して努力する社会である。

http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-19-t1035-4.pdf

人口減少が進めば、人がいない地域が増えるので、環境との調和という観点からみればメリットあり、というのは納得できる話です。

実際、無居住地域はめちゃ増えますから、だいぶ自然豊かになりそうですよね。

https://www.soumu.go.jp/main_content/000273900.pdf

もちろん、無策なまま人口減少したら、環境との調和が図れるという単純な話ではありません。

高齢者や女性の雇用機会を確保したり、税制改革したりは必要です。

けど、資源不足に悩む日本にとって、人口減少は人間と環境が適応する機会でもあるわけです。

なので、環境との調和という視点から見たら、人口減少にメリットを見いだせるのです。

また、やや趣はことなりますが、人口減少危機論は関係者のポジショントークで、特に問題はないという立場もあります。

これは「環境との調和」という視点では説明できないですが、視点によってメリットとデメリットが変わる例証になります。

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人口減少のデメリットを見いだす視点

人口減少のデメリットは、経済成長重視という視点にたつと見いだせます。

例えば、内閣府は人口減少が進むと、生産性、労働投入、資本蓄積が減るので、経済成長に対してマイナスの影響を与えると指摘しています。

下図は経済成長と人口規模の関係を示したものですが、人口増加したら経済成長し、人口減少したら経済衰退していく事態を表しています。

https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/future/sentaku/s3_2_11.html

実際、生産年齢人口は2005年から2050年にかけて3,500万人も減少しますから、経済成長にマイナスの影響を与えるというのは当然といえば当然の話です。

https://www.soumu.go.jp/main_content/000273900.pdf

「経済よりも人命!」と思うかもですが、貧しくなると疫病、飢餓、暴動などの問題が起こりますから、人命を優先するためには経済活動を促進する必要があります。

国土交通省はさらに具体的な影響を示しておりまして、人口減少が各種経済活動を萎縮させて、さらなる人口減少に突入すると予想しています。

http://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h26/hakusho/h27/pdf/np101200.pdf

とはいえ、人口減少=経済衰退という単純な話でもないようで、視点を変えたら異なる姿を見ることができます。

例えば、実質GDPと人口の関係を見ると、下図のようになっておりまして、1人あたりの労働生産性が高まれば経済成長を促せるという見立てもあります。

https://fq.yahoo.co.jp/agenomics/1.html

つまり、人口減少は負の影響をもたらすけども、労働生産性を高めることができれば、乗り越えることができる可能性ありです。

なのになぜ、経済成長重視という視点を持つと、人口減少のデメリットに目が向くのか。

日本は先進7ヶ国で最低の労働生産性ですし、社会保険料負担が年収の約30%(半分は会社持ち)もあるうえに、下図で示すように実質賃金でも下がり続けていますから、人口減少=経済成長という予測に実感にそわないんだろうと考えています。

現在、どちらかといえば人口減少のメリットよりもデメリットが着目されています。

それは、人口減少によって生じるデメリットが、日々の暮らしに直結した問題だからです。

日本は資源不足という難題を抱えていますが、わりとメタな視点に立たないと気づけない話です。

それよりも普段の生活の中で体感する苦しさの方が、ぼくのような一般の人にとっては切実な問題でしあり、しかも人口減少の説明力がわりと高い。

なので、人口減少のデメリットがクローズアップされがちなんだと思っています。

人口減少がもたらすデメリットについては以下の本で詳しいですので、ぜひお読みください。

まとめ:人口減少のメリットとデメリットは視点によって変わる

京極真
京極真

本記事では「人口減少は大問題だという人もいれば、たいした問題ではないという人もいます。いったいどっちが本当なんだろうか」という疑問にお答えしました

結論をいえば、人口減少のメリットとデメリットは視点によって変わります。

すべて調べたわけではないですが、基本的にはメリット派もデメリット派も、暮らしは守りたいし、よりよい暮らしにしたい、という視点は共通しているのではないか、と考えています。

だって、メリット派もデメリット派も、基本的な論調は「生活への影響」ですからね。

ただ、その時間軸が両者で異なっています。

メリット派はどちらかというと、長期的視点にたったときに、資源が乏しい日本で人口減少することは環境との調和がとれるので、長い目で見たらアドバンテージもあるから、それを前提にいろいろ対策たてていけばいいよね、という議論になっているか、とぼくは理解しています。

他方、デメリット派はどちらかというと、中短期的視点にたっており、人口減少すると日々の暮らしでいろいろ弊害が起こるから、とにかく今すぐ対策が必要になってくるよ、という議論によっています。

両者は視点の時間軸が違うだけで、暮らしは守るという視点で共通しているので、環境とも折りあいをつけるという視点ももちつつ、今ある暮らしをちゃんと守るためにはどうしたらいいか、というハイブリッドな視点をもてば、不毛な信念対立に陥らずに建設的に検討できるのではないか、と思うわけです。

ぼくは教育界・医療界で飯を食っていますから、人口減少のデメリットを既にというほど味わっています。

上記の国土交通省の図を見てもわかるように、医療、教育は人口減少の悪影響をもろ受けますからね。

これからさらにこの問題は本格化しますので、この嫌な展開をさらにさらに味わうことになるのか、、、と思うとゲンナリします。

できれば、海外に移住したい、笑。

なので、基本的には「人口減少への対策を求む!」と切望しています。

著者紹介
京極 真
京極 真
Ph.D.、OT
1976年大阪府生まれ。Ph.D、OT。Thriver Project代表。吉備国際大学ならびに同大学大学院・教授(役職:人間科学部長、保健科学研究科長、(通信制)保健科学研究科長、他)。首都大学東京大学院人間健康科学研究科博士後期課程・終了。『医療関係者のための信念対立解明アプローチ』『OCP・OFP・OBPで学ぶ作業療法実践の教科書』『作業で創るエビデンス』など著書・論文多数。
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