【初心者向け】理論研究の方法入門【研究者が語る】
本記事では「理論研究の方法に関心がありますが、研究法の本を見てもよくわかりません。理論研究の方法について教えてください」という質問にお答えします。
- 理論研究の方法に入門する前に
- 【入門】理論研究の方法
理論研究の方法に入門する前に
理論研究って何?
理論研究の方法について解説する前に、理論研究について解説しておきます。
結論をいうと、理論研究は、根源から物事の意味を問い直し、新しい理論を開発する方法です。
理論研究と対をなすのは、実証研究です。
理論研究と実証研究は車の両輪であり、学術を推進するためには理論研究と実証研究の両方が必要です。
実証研究はとてもパワフルな方法ですが、学的基盤に問題がある場合、それに依拠して研究する実証研究では根本から解消することはできません。
学術活動の前提に問題があるときは、実証研究よりも理論研究です。
理論研究は前提を根底から問い返し、よりよいかたちで再構成できる方法だからです。
理論研究と実証研究の比較は以下の記事で詳しく解説しているのであわせてお読みください。
理論研究の利点と欠点
理論研究には利点だけでなく、欠点もあります。
それをさくっと示すと以下の通り。
- 利点:理論研究は理論上のアポリアの解明ができる。これは実証研究では無理である
- 欠点:理論研究は研究者の思考力に依存している。実証研究はデータで勝負できるから、理論研究に比べると思考力が低くても何とかなることがある
【入門】理論研究の方法
理論研究の目的
理論研究は研究の方法の一種なので、それに適した目的というものがあります。
最大公約数的に理論研究の目的を示すと、それは「理論上のアポリアの根本解消」です。
アポリアというのは難問でして、その例は以下の通り。
- パラドックスがある
- 中核にある概念や仮説が不明瞭である
- 適用できる範囲にズレがある
- 既存の理論で対応できない問題がある
- 理論の説明力・予測力が乏しく拡張が必要である、など
理論研究の方法
この目的を達成するための基本手続きは以下の通り。
- 研究課題の設定
- 研究デザイン
- 研究の実行
- 論文化
理論研究の研究デザインでは具体的な方法を選択します。
理論研究の方法は以下の通り。
- 原理的思考 ← すべての方法の基礎になる
- 歴史分析法
- 概念分析法
- 理論統合法
- 理論修正法
- 理論継承法 など
この中でも特に重要なのは、原理的思考です。
原理的思考とは、特定の観点から論理的に考える限りにおいて共通了解しうる可能性の理路を見いだす方法です。
具体的な手続きは以下の通り。
- 手順1:関心を定める
- 手順2:判断停止する
- 手順3:構造が成立する条件を問う
- 手順4:構造成立の条件を吟味・洗練する
- 手順5:共通了解可能性を担保するために論証する
原理的思考をベースに、目的に照らして歴史分析法、概念分析法、理論統合法、理論修正法、理論継承法などを活用していきます。
これら個別の方法については本記事の上部に設置した動画をご覧になっていただけたらと思います。
まとめ:理論研究の方法
本記事では「理論研究の方法に関心がありますが、研究法の本を見てもよくわかりません。理論研究の方法について教えてください」という質問にお答えしました。
理論研究は,根源から物事の意味を問い直し,新しい理論を開発する方法です。
この目的を達成するために以下の方法を活用します。
- 原理的思考
- 歴史分析法
- 概念分析法
- 理論統合法
- 理論修正法
理論研究はパワフルな方法ですけども、これ単体では限界もあるので、実証研究とあわせて柔軟に活用しましょう。