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作業療法教員を目指して大学院に進学すると絶望する件【対策あり】

京極真
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本記事では「将来、作業療法教員になるために大学院に進学したいです。作業療法教員って人を育てられるし、研究活動もやりやすくなるので、キャリアアップとして最適だと思いませんか」という疑問にお答えします

こんな方におすすめ
  • 作業療法教員になるために大学院進学したい
  • 大学院に進学する意義を高めたい
  • 絶望しないために読むべき本を知りたい

作業療法教員を目指して大学院に進学すると絶望する件

結論から言うと、作業療法教員になることのみを目指して大学院に進学すると、わりと早期に絶望するかなぁと思っています。

大学院進学自体は、作業療法を必要とするクライエントの存在を考えると極めて重要なことです。

なので、変に絶望しないよう対策を立案するために、その理由を理解しておく必要があります。

さて、上記の主張の主な理由は以下の通り。

理由
  • 理由①:作業療法教員(大学・短大・専門学校)のポストが非常に少ない
  • 理由②:作業療法養成校(大学・短大・専門学校)の現状が厳しすぎる

理由①:作業療法教員(大学・短大・専門学校)のポストが非常に少ない

作業療法教員になりたくても、そもそもポストがかなり少ないです。

つまり、作業療法教員を目指して大学院に進学すると「なりたい→なれない→なりたい→なれない→なりたい→なれない→なりたい→なれない→なりたい→なれない→なりたい→なれない・・・」という悪循環を繰り返すので、そのうち「こんなはずじゃなかった」と絶望していくという構造があるわけです。

大学・短大の場合、作業療法教員の公募情報はJREC-INに掲載されています。

上記のサイトを見ればわかるように、2019年1月21日時点で11件しかヒットしません。

修士号、博士号をもった作業療法士の絶対数は少ないものの、以前に比べたら増えているので11件というのは母数に対して圧倒的に少ないです。

さらに細かく、求人内容をみると、「精神障害分野」「身体障害分野」などのように制約があります。

もし、あなたが身体障害分野の作業療法士ならば、精神障害分野の公募にエントリーしてもとまず通りません。

また、中には「大学院の研究指導を担当できること」なんてものもあります。

これは要するに「マル合教員」といって、大学院教育ができるハイレベルな人しかとらないよ、という意味で、現時点で大学院教育ができている人でないとほぼ無理です。

そうすると、ご自身の条件にあうところなんてそうそう見つからないわけです。

たまに条件がフィットする公募があっても、全国にそれを狙っている人がいるわけでして、基本的にめちゃくちゃ狭き門です。

また、公募情報がでていたとしても、内々ですでに有力な候補者が決まっていることがあります。

採用する側としては、できるだけ良い人をとりたいので公募を出します。

でも、公募には求めるレベルに達しない人しか応募しないリスクがつきまといます。

その対策として、公募を出すときは、予め有力な候補者に声をかけて応募してもらうようにお願いするわけです。

もちろん、事前の根回しが成功する保証はありませんが、公募情報の裏側では様々な駆け引きがあるものです。

なお、これは「デキ公募」とはまったく違うので、たとえ有力な候補者に声かけしていたとしても、別のところから応募があればわりとフェアに審査が行われます。

とはいえ、JREC-INに公募が掲載されたとしても、水面下で様々な駆け引きが進んでいる可能性があるわけで、そうすると一般の応募者のチャンスは実質的にさらに少ないことになりがちです。

ぶっちゃけ、ぼくも大学の公募で何度も落ちているので、その難しさがわかるかと思います。

他方、専門学校の場合、作業療法教員の公募情報はJREC-INに掲載されることもありますが、ほとんどは専門学校のホームページで募集するか、コネで採用するか、のどちらかだと思います。

つまり、専門学校の公募情報は大学・短大の公募情報に比べて流通しにくいわけです。

それゆえ、専門学校で働きたいと思っても、そのチャンスがそもそも回ってきにくいわけです。

理由②:作業療法養成校(大学・短大・専門学校)の現状が厳しすぎる

絶望するもうひとつの理由は、一般論として全国的に作業療法士養成校(大学・短大・専門学校)の現状が厳しすぎることが挙げられます。

病院・施設など臨床における作業療法士の仕事自体はめちゃ豊富です。

作業療法士という医療専門職は社会的ニーズが豊富で、可能性にあふれていますから仕事に困ることはない。

むしろ今でもぼくのところには「作業療法士を雇用したいけど、作業療法士が見つからないから困っている。紹介してほしい」という連絡が絶えずくるぐらいです。

だけども、一般論として、作業療法士を目指したい人が、全国的にめちゃくちゃ少ないんですよね。

医師、看護師、薬剤師、理学療法士などと比べても圧倒的に志望者が少ない。

全国の作業療法士養成校(大学・短大・専門学校)は国立・公立・私立を問わず、作業療法士の志望者減で「定員割れ」というリスクに直面しています。

文字で書くと伝わりにくいかなぁと思いますが、これはもう本当に厳しい状況でして、作業療法士養成校(大学・短大・専門学校)は国立・公立・私立に関係なくどこも薄氷をふむ状態です。

ごく一部の作業療法士養成校は、今のところ志望者に恵まれています。

しかし、ヤバくなるのはマジで時間の問題です。

だって、これから受験生の母数がさらにぐんっと減りますからね。

以下の図をみるとわかるように、これからどんどん受験生は減っていきます(引用:文部科学省「高等教育の将来構想に関する基礎データ」)。

全国的にみて、作業療法士養成校(大学・短大・専門学校)は国立・公立・私立を問わず、この少子高齢化のあおりでめちゃくちゃ苦戦しています。

臨床にいると実感しにくくても、作業療法教員になるために大学院に進学すると、この厳しさが肌感覚でわかるようになります。

大学院に進学すると全国の作業療法士養成校(大学・短大・専門学校)の惨状を知ることができるからです。

そして、そうした惨状は自分が目指している「未来」なわけです。

作業療法教員になるために大学院に進学したのに、目指している未来が焼け野原だったとなればそりゃ絶望しちゃいますよね。

ちなみに、ぼくはなぜこのような厳しい領域で奮闘しているかというと、作業療法を必要とするクライエントの存在を考えると臨床現場に優秀な作業療法士を供給し続けることはクライエントと作業療法にとって生命線になる重要な仕事だと認識しており、ぼくはそこで成果を出して貢献できると踏んでいるからです。

また、作業療法教員の仕事自体はとても楽しいし、やり甲斐ありますから頑張れるんだと思います。

いま全国の作業療法士養成校(大学・短大・専門学校)で奮闘している作業療法教員は皆さん同じような志で厳しい中でも歯を食いしばって奮闘しているんじゃないかなぁ。

【対策】大学院に進学して絶望したくないなら「作業療法教員になる」以外にも目標を持つべし

わりと悲惨な話が続いたので、ここからは対策を解説します。

結論から言うと、大学院に進学するなら「作業療法教員になる」という目標以外も、広い視点でしっかり持つべきです。

繰り返しますが、作業療法士の大学院進学そのものは、作業療法を必要とするクライエントの存在を考えると極めて重要な営みです。

大学院で鍛えられると、研究力=問題解決力が高まるので、作業療法を必要とするクライエントの問題解決に貢献できるようになるからです。

だから、ぼくはもっと多くの作業療法士が大学院に進学した方がいいし、その支援を行いたいと考えています。

ですが、上述したように、作業療法教員になることのみを目指して大学院に進学すると、「なりたい→なれない→なりたい→なれない・・・」という賽の河原のような悪循環を繰り返すので、そのうち「こんなはずじゃなかった」と絶望していくという構造があるわけです。

そうした構造から抜けるためには「作業療法教員になる」という目標をもっていてもよいですが、それだけだとわりと早期に絶望するので他にも堅実な目標をもつことが重要です。

本記事でおすすめする目標は以下の通り。

おすすめする目標
  • その①:イノベーションに挑戦したい
  • その②:臨床の問題を解決したい
  • その③:事業を起こしたい
  • その④:臨床でキャリアアップしたい
  • その⑤:国際的に活躍したい

その①:イノベーションに挑戦したい

大学院は研究力を高めるところでして、その機能はイノベーション=技術革新の促進です。

イノベーションへの挑戦を目標にしていると、作業療法教員になりにくくても、作業療法士養成校(大学・短大・専門学校)が焼け野原でも、わりと絶望することなく楽しく頑張れるものです。

「いまは地球上に存在しない新しい知識と技術を創出することによって、クライエントが困っている問題を解決できるようにしたい」という目標は健全で可能性にあふれているのでかなりおすすめです。

その②:臨床の問題を解決したい

大学院に進学して臨床上の問題を解決する、という目標もわりとおすすめです。

この目標をもつと、大学院を臨床上の問題解決の場として利用できるので、単に作業療法教員になりたいと思っているよりも建設的です。

臨床には目の前に困っているクライエントがいらっしゃるわけでして、そうした方々のためにきっちり解決策を研究開発するというのは可能性を切り拓く原動力です。

その③:事業を起こしたい

大学院で研究力や問題解決力を高めて、新しく事業を興したいというのも可能性のある目標でおすすめです。

実際、ぼくの研究室を修了してから施設長になったり、新しい事業を立ち上げた方たちがいらっしゃいます。

「自分の商品を作って売る」ために大学院進学を利用するという目標があると、社会情勢に左右されずに未来を切り開けるので絶望しにくいです。

その④:臨床でキャリアアップしたい

大学院に進学して、臨床でポジションを上げていくというのも、わりとおすすめの目標です。

多くの病院・施設は大学院を修了してもポジションに影響しないでしょうが、なかには修士号、博士号を取得した後に地位を上げている人がいます。

今後そういうケースが増えると思うし、キャリアパスとして増やしていかないといけないので、臨床でキャリアアップするために大学院進学するという目標も建設的でよいかと思いますね。

その⑤:国際的に活躍したい

国際的に活躍するためには、博士号は最低限必要なので、そのために大学院に進学するというのも夢があってよいです。

ただ、海外の大学でポストをゲットするとなると話は別でして、作業療法界隈の場合は今(2019/01/21)のところ基本的に無理ゲーだと思っておくとよいです(将来的にはハードゲームだけど可能性ありかもしれない)。

英語論文をたくさん書き、国際学会に招聘されて、海外から高い評価を得られるようになるために、大学院に進学して博士号をとるというのは建設的で実現可能性のある素晴らしい目標です。

大学院進学希望者が作業療法教員になる以外の目標もつために読むべき本【厳選2冊】

おすすめの本は以下の1冊です。

おすすめ本
  • 日本再興戦略
  • 多動力

日本再興戦略

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¥948 (2024/11/24 15:16:23時点 Amazon調べ-詳細)

必読書。

大学教員という立場の著者が、新しいスキームを開発して、少子高齢化という社会構造に対する発想の転換で勝負をかける必要性を説いています。

非常に幅広い視点から物事を考える機会になるので、「作業療法教員になる」という目標以外も立てるために非常に役立つでしょう。

多動力

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¥550 (2024/11/24 01:44:12時点 Amazon調べ-詳細)

こちらも必読書。

大学院に進学する以上は、学位以上の成果を手にしたいはずです。

本書は「作業療法教員になる」という目標以外も立てて、どうチャレンジしていけばよいかを考える材料を提供してくれます。

まとめ: 作業療法教員を目指して大学院に進学すると絶望する件【対策あり】

本記事では「将来、作業療法教員になるために大学院に進学したいです。作業療法教員って人を育てられるし、研究活動もやりやすくなるので、キャリアアップとして最適だと思いませんか」という疑問にお答えしました。

結論から言うと、「作業療法教員になるために大学院に進学したい」という目標だけではわりと絶望しやすいので、他にも可能性に開かれた目標を設定しましょう。

本記事でおすすめした目標は以下の通りです。

おすすめする目標
  • その①:イノベーションに挑戦したい
  • その②:臨床の問題を解決したい
  • その③:事業を起こしたい
  • その④:臨床でキャリアアップしたい
  • その⑤:国際的に活躍したい

大学院進学自体は、作業療法を必要とするクライエントの存在を考えると極めて重要なことです。

なので、変に絶望しないようにするために、幅広い視点から豊かな目標を設定しましょうね。

なお、大学院進学に関する他の情報は以下の記事でまとめているのでぜひ合わせてご覧ください。

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著者紹介
京極 真
京極 真
Ph.D.、OT
1976年大阪府生まれ。Ph.D、OT。Thriver Project代表。吉備国際大学ならびに同大学大学院・教授(役職:人間科学部長、保健科学研究科長、(通信制)保健科学研究科長、他)。首都大学東京大学院人間健康科学研究科博士後期課程・終了。『医療関係者のための信念対立解明アプローチ』『OCP・OFP・OBPで学ぶ作業療法実践の教科書』『作業で創るエビデンス』など著書・論文多数。
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